2020年09月15日

ドイツ連邦軍次期制式ライフルの選定状況まとめと個人的推察

久しぶりに時事ネタでブログ更新!
皆様ご存じかと思いますが、今日の朝になって驚きのニュースが全世界を駆け巡りました。
ドイツ連邦軍次期制式ライフルの選定状況まとめと個人的推察
なんと長らく進められてきたドイツ連邦軍次期制式ライフルコンペでHaenel社のMK556が選ばれたと!
てっきりHKありきの出来レースだとばかり思っていたのでびっくりしました。ていうかARクローンなんていややあああああああああああああああああああ(本音)
そんなこんなで「ほんまかいな?」と思っていろいろと調べてみると、MK556に決まったと判断するのは早計であるように思われることがわかりましたので、現時点でいったん情報を整理しようと思います。
推測も多分に含まれますので、気になる点などはぜひともコメントいただきたいです。


●ニュースソース
銃器関連ニュースを扱う海外の大手ブログ・ニュースサイトが情報源のようです。
+ the firearm blog
https://www.thefirearmblog.com/blog/2020/09/14/breaking-c-g-haenel-wins-tender-for-the-german-g36-successor/
+ soldat&technik
https://soldat-und-technik.de/2020/09/bewaffnung/23623/system-sturmgewehr-bundeswehr-c-g-haenel-gewinnt-ausschreibung-um-die-g-36-nachfolge/
これらのサイトだと、たしかにMK556に決まったという内容になっています。
一方で、この報はドイツ最大手メディアdpaから発信されたものの、まだHaenelや政府公報には出てないとのこと。

●国防省プレスリリース
その後、国防省からの短いプレスリリースが公開されました。
+ Bundesministerium der Verteidigung(ドイツ連邦国防省)
https://www.bmvg.de/de/presse/system-sturmgewehr-bundeswehr-ausschreibungssieger-vergabe-2370536
以下のように書いてあります。
「入札者から受け取った入札内容は、契約当局によって評価されました。 この評価から、入札の勝者はC.G. Haenel GmbHとなりました。
入札者はH&KとHaenelしか残っていませんでしたが、このうちHaenelが入札に勝ったという内容です。引き続き以下の文もあります。
評価の結果はまだ法的に有効ではありません。法的手段は、落札できなかった入札者に常に開かれています。
これはおそらく入札者による異議申し立てを考慮していると思われます。

●HKプレスリリース
そうこうしてるうちに、入札に敗北したHKからもプレスリリースが公開されました。闘争する気満々です。いいぞもっとやれ。
+ HECKLER & KOCH GmbH
https://www.heckler-koch.com/de/presse/detail/article/statement-zur-vergabeentscheidung-der-bundeswehr.html
ちょっと長いですが、冒頭の文に気になる点があります。
「Heckler&Kochは本日、その2つの提案のどちらも連邦軍の突撃ライフルの入札に含まれるべきではないと通知されました。」
2つの提案←HK433,HK416の2つを提出していたのでそれらのことでしょうね。
入札に含まれるべきではない←『含まれるべきではない』???入札に敗北したではなく???
続いて以下の2つの文。
「ドイツ連邦軍の入札については、ヘクラーとコッホはすでに技術的に高度に開発されたHK416を再び改善し、すべての入札条件を確実に満たしました。
「今度は法的観点から決定を詳細に検討し、すべての法的可能性を尽くします」
全体的に「うちの提案はちゃんと要件を満たしていたぞ!」という文章が多いように思います。
そしてHKが勝訴したG36訴訟に引き続き、再び法廷闘争となりそうです。

●選定状況の推察
以上のソースをもとに、以下のように考えました。あくまでも個人的な推測です。
「HKの提案したHK416,HK433とHaenelの提案したMK556が比較され、結果としてMK556が選ばれた」のではなく、
HKの提案は入札要件不適合で却下され、Haenelの提案だけが残ったため、結果としてMK556が選ばれた」なのではないでしょうか。
だとすれば、HKと国防省の法廷闘争は入札要件定義に関する戦いになりそうですね。

さらに邪推するならば、本件は国防省側からのHKに対する一種の強請り工作なのではないでしょうか。
Haenelを当て馬としてHKから譲歩を引き出す戦術のように見えますし、「仕様通りに納品したHKに非は無い」という判決となったG36訴訟を踏まえると、要求仕様をギリギリまで高く設定しようという魂胆も感じられます。
そもそも、G29等の特殊部隊向け小規模受注の実績しかないような中小銃器メーカーに過ぎないHaenelが、いきなりサービスライフルを供給できるほどの設備やノウハウを持っているとはちょっと信じがたいです。「受注欲しさに営業部が無茶ぶりして結局全部おじゃんになる」みたいな、しょうもないオチすら考えられます。さすがに入札前にその辺はチェックしてるだろうとは思うんですが…

●今後
国防省は選定を10月末までに終わらせ年内に予算通過させたいようですが、HKの法的対応がどうなるかにかかっているかと思います。
個人的な予想では、なんだかんだで妥協点を見つけて結局HKになるんじゃないかな…と思ってます。ARはいやだARはいやだ…(ブツブツ)
そもそも、選定された後も実際の部隊運用試験など全面配備への道のりは長いので、途中でダメになる可能性も十分ありますしね。

スペシャルサンクス:MG3さんねこちんさんはじめツイッタランドの皆様、毎度ながら情報提供・ご意見どうもです



Posted by わいと  at 21:54 │Comments(4)軍事ネタ時事ニュース

この記事へのコメント
へーネルが中小・・・?
へーネルが無ければ今日の突撃銃が無かったかも知れない、そんな歴史に名を刻む企業に対し「中小」???
Posted by 国家社会主義者 at 2020年09月17日 02:50
> 国家社会主義者 さん
コメントありがとうございます。
中小メーカーというのは大手メーカーに対する表現であって蔑称ではありません。
HKのような規模の人員や設備を持っていないという意味で、適切な表現かと思います。
Posted by わいとわいと at 2020年09月17日 20:19
>わいとさん
あまり社会に出られたことのない方からすると中小企業という言葉にはマイナスなイメージがあるのかもしれませんね。
ちなみに18年頃には9名だけだったと言われるハーネル社の従業員数ですが、現在では120名いるとも言われています。
生産能力向上のためにグループ企業内で人員のやり取りがあったのかもしれない、と考えると興味深いですね。
Posted by NekotinNekotin at 2020年09月17日 20:52
> Nekotin さん
毎度お世話になってますm(_ _)m
ここ数年でずいぶん拡充してるんですね!新工場も…なんて話もちらほらと。
親グループのカラカルはあまり聞いたことない名前でしたが、UAEのサービスライフルを手掛けてたりするようですね…やろうと思えばやれちゃうのか
Posted by わいとわいと at 2020年09月17日 21:19
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サバゲ歴:2010年5月から
職業:学生→サラリーマン
生息地:北海道札幌市近郊→東京都
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